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D2C(ネット通販)は低コストで始められる?
D2C(ネット通販)事業は、総合通販など他の通販事業と比べて低コストで始めることが可能と言われています。それは「商品数の少なさ」が理由の一つです。
総合通販では幅広いジャンルの中から数多くの商品を販売しています。一方で、D2C(ネット通販)は特定の商品しか販売しておらず、たった1種類の商品しか販売していない、ということも珍しいケースではありません。
幅広いジャンルの商品を豊富に集めなければならない総合通販に対し、たった1種類の商品からでも始められるD2C(ネット通販)。商品の仕入れコストがかからないビジネスモデルがどちらなのかは、言うまでもありません。
「収益化」を望むならきちんと資金を用意するべき
総合通販に比べて商品数が少ないために、「低コストから始められる」と考えられがちなD2C(ネット通販)事業ですが、事業を軌道に乗せながらきちんと収益を得るためには、余裕をもって資金を用意しておくことが大切です。
D2C(ネット通販)事業に限った話ではありません。どのような事業においても、立ち上げに必要となる初期費用の項目を把握しながら、初めは赤字覚悟で初期投資を行い、安定化や収益化につなげる必要があります。
初期投資は「赤字」が当然?D2C(ネット通販)ならではのビジネスモデルとは?
D2C(ネット通販)は、新規顧客を獲得するために広告費を使って集客を行い、リピート顧客の売上で利益を伸ばしていく「先行投資型」のビジネスモデルです。そのため、初期投資が赤字になることは当たり前だと言っても過言ではありません。
基本的にD2C(ネット通販)事業は、黒字転換するまでに約2年はかかると言われています。新しい商品をゼロから立ち上げるため、まずはお客様に商品やサービスの良さを知ってもらった上で、リピート顧客を少しずつ増やしていく必要があること、そしてそのリピート顧客の売上が安定してくるまでに、時間がかかるのです。そのため、売上予測を立ててから、余裕を持って資金を準備しておく必要があります。
最近では、この黒字転換の時期をいかに早くできるかといったコンサルティングをしているD2C(ネット通販)向けの支援企業もありますし、約1年で黒字転換を可能とする新しいビジネスモデルもあります。初期費用をいち早く回収したい場合は、D2C(ネット通販)向けの支援企業に相談してみるのもよいでしょう。
関連記事:D2C(ネット通販)のビジネスモデルとは|総合通販との違いと3つの定番モデル
D2C(ネット通販)事業の立ち上げに必要な初期費用
ここからは、D2C(ネット通販)事業を開業するために必要な初期費用について、具体的な数字とともに説明します。
<D2C(ネット通販)事業の立ち上げに必要となる初期費用の6つの内訳>
- 商品の企画・製造費用
- ECサイトの構築・ランディングページなどの制作費用
- 物流コスト
- 広告費
- 決済方法の導入手数料
- コールセンター・人件費
どのような費用が必要となるのか、それぞれどのくらいの費用がかかるのか、しっかり頭に入れておきましょう。
商品の企画・製造費用
60万~180万円
D2C(ネット通販)で販売する商品を企画・製造するためには、60~180万円の費用がかかります。特に製造費用は、何を作るのか、有効成分や配合比をどうするか、そしてどれぐらいの数量を作るのかにより大きく変動します。
時間をかけて黒字化することが基本であるD2C(ネット通販)では、初めから商品を万単位で製造してしまうと、それだけリスクも高くなります。最低でも1,000個、最高でも3,000個を目安に製造しましょう。
ECサイトの構築・ランディングページなどの制作費用
- ランディングページの制作:30万~150万円
- ECサイトの構築(カートシステム利用料):5万~10万円
- 同梱物:10万~30万円
商品を知ってもらうためのランディングページやECサイトの構築、注文を管理するためのカートシステムの準備は必須です。その他、商品に同梱するチラシやパンフレットなどの同梱物も用意する必要があります。
ランディングページの制作費の相場は、比較的リーズナブルな会社でも30万円以上は見込んでおきましょう。ランディングページの質は売上を左右する要素でもあるため、なるべく費用をかけて作りこむことをおすすめします。また、ランディングページの制作やECサイトの構築をする際は、ドメイン費用やレンタルサーバー費用もかかることを覚えておきましょう。また、スマートフォンでのインターネット利用が普及している現在、PCとスマートフォンのそれぞれに合わせて最適化されたデザインにすることも重要です。
そして、リピート販売をするために、毎月決まったサイクルでお客様に商品を届ける機能(受注管理システム・カートシステム)の用意も必要です。カートシステムは会社によりそれぞれ機能性が異なるため、数社を比較して、自社に合うサービスを導入することをおすすめします。
チラシやパンフレットなどの同梱物は、ページ数にもよりますが、1ページ2~3万円程度の制作費がかかります。最低でも10万円程度の予算を考えておきましょう。チラシやパンフレットなどの同梱物に記載する文章は自分で考えてデザインのみ外注する、クラウドソーシングサービス(フリーデザイナーとのマッチングサイト)を利用してコンペを行うなど、予算を抑える方法もあります。
物流コスト
0~10万円/月(購入数に応じて)
商品を届けるための物流コストは必須です。購入数に応じて費用の相場は異なるものの、10万円ほどを用意しておけば安心と言えるでしょう。
最近では、小規模通販に対応したサービスも増えているため、上手く活用しましょう。また、初期費用無料の物流サービスも増えているため、実際に購入された分だけ支払うことも可能です。
広告費
最低3ヶ月分
広告費は商品の売上に直結する大切なファクターであるため、一概にいくらを準備しておけばOKという基準はありません。用意できる金額の範囲で、予算を広告費に投入することが最も理想的です。広告費は、新規顧客を獲得しリピート顧客が売上を作るまでの初期投資と考え、最低でも3ヶ月分の広告費を用意しておきましょう。
決済方法の導入手数料
0~10万円(購入数に応じて)
決済方法の導入手数料とは、クレジット決済やコンビニ後払い決済を導入するための費用です。これらの決済方法を導入するためには、決済会社と契約する必要があります。実際に商品が売れた場合は、決済金額に対して3%前後の手数料と、決済情報を処理するためのトランザクション費用(数円~)が発生します。
コールセンター・人件費
10~20万円
お客様からの問い合わせ対応業務をコールセンターなどに依頼する場合には、人件費として10~20万円程度の初期費用がかかります。お客様に対する受け答えのマニュアル作成や、オペレーターの研修費なども必要です。
自社で対応する場合は、数千円程度のフリーダイヤル開設費と通話料の実費のみで運用も可能ですが、多くのお客様から問い合わせをもらった場合は一人ひとりに丁寧な対応ができなくなることも考えられるため、なるべく早い段階でコールセンターに依頼、もしくは人的リソースを増やすことをおすすめします。
D2C(ネット通販)事業の立ち上げ時の資金はどれくらいがベスト?
<立ち上げに必要となる初期費用の6つの内訳と費用目安>
内訳 | 費用目安 |
---|---|
商品の企画・製造費用 | 60万~180万円 |
ECサイトの構築・ ランディングページなどの 制作費用 |
ランディングページの制作:30万~150万円 ECサイトの構築(カートシステム利用料):5万~10万円 同梱物:10万~30万円 |
物流コスト | 0~10万円/月(購入数に応じて) |
広告費 | 最低3ヶ月分 |
決済方法の導入手数料 | 0~10万円(購入数に応じて) |
コールセンター・人件費 | 10~20万円 |
ここで紹介した費用はあくまで目安であり、マーケティング戦略や売上目標によって初期費用の価格は大きく変動します。スタート時から一気にお客様を増やし、数年で年商数億円という事業を目指しているのであれば、初期費用も数千万円規模で用意しておかなければなりません。
しかし、D2C(ネット通販)は小規模で立ち上げるケースも少なくないでしょう。余裕を持ってD2C(ネット通販)事業を始めたい場合は、広告費を除いた費用として「200~300万円程度」を立ち上げ時の初期費用として用意しておくことをおすすめします。
D2C(ネット通販)は、リピート率が非常に重要です。そしてリピート顧客を集めるためには、多くのネットユーザーの目に留まる広告を作成して、新規顧客を少しずつでも増やさなければなりません。無理のない資金計画を立てながら、時間をかけて黒字化に転換させることができれば、D2C(ネット通販)事業で大きな売上を得ることが可能となります。
まとめ
D2C(ネット通販)事業は、実店舗を持たなくても少ない初期費用で始められるビジネスモデルとして人気です。しかし、立ち上げに必要となる初期費用の項目を、今回の記事で初めて把握したという方もきっといるはずです。これから初期費用の資金を集める方は、その資金をどの項目にどのくらい投入するかイメージして計画を立てながら行動してみてください。
繰り返しになりますが、D2C(ネット通販)事業は、初期費用をいかに早く回収し、黒字転換できるかが非常に大切です。黒字化してからはどんどん売上が積みあがっていく状態となるため、それまで安定して運営していけるまでの知識をきちんと身に着けておきましょう。