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D2C(ネット通販)で注意すべき2つの「法律」
そもそもD2C(ネット通販)ビジネスは、特定の商品に絞ってその商品をリピート購入してもらう事業のことを指しており、お客様に商品を気に入ってもらい、定期購入(サブスク)されることで成り立つ通販ビジネスです。現在はそんなD2C(ネット通販)ビジネスが注目され、市場に参入する経営者が増えています。
D2C(ネット通販)は、リピート顧客が増加すればするほど高い収益が見込めるビジネスであることは確かです。しかし、知識を持っていない初心者が、何の勉強もせずにD2C(ネット通販)ビジネスを始めることは危険であるということも、あながち間違ってはいません。それには、D2C(ネット通販)ビジネスの主な商品ジャンルである化粧品や健康食品に関連する法律が大きく関係します。D2C(ネット通販)ビジネスに関連する法律は大きく分けて2つあります。それが、「薬機法」と「景品表示法」です。
ここからは、薬機法と景品表示法について詳しく、かつ分かりやすく説明します。
薬機法とは?
まずは薬機法(やっきほう)について説明します。薬機法は正しく言うと、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という日本の法律で、以前は「薬事法(やくじほう)」という名称でした。
薬機法とは、化粧品や健康食品などを販売する際に遵守すべき法律です。例えば、化粧品は以下のような定義がされています。
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう
(引用:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)
この定義を逸脱して化粧品の効能を超える文言を広告に使用してしまうと、薬機法に抵触してしまいます。
一方、健康食品は食品カテゴリーに属するため、薬機法での定義として定められておらず、直接の対象とはなりません。しかし医薬品ではないため、医薬品のような効果効能を宣伝してしまうと、薬機法に違反することとなります。薬機法は、広告の力で消費者を騙すような売り方や表現を規制し、消費者を守る法律といえます。
薬機法に違反してしまうNG表現集
薬機法では具体的に、以下の3つが制限されています。
- 1.疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
- 2.身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果
(ただし、栄養補給、健康維持等に関する表現はこの限りでない)- 3.医薬品的な効能効果の暗示
化粧品や健康食品は医薬品として認められていないため、医薬品のような効能効果を暗示してはなりません。例えば、次のような表現はすべてNGです。
- リコピンを含んでいるため、アンチエイジング効果がある
- イソフラボンの効果でバストアップ!
- このサプリを飲んだら、がんが治りました
- これさえ飲めば、医者いらず!
- 体脂肪の代謝を促進させる効果がある
- 血糖値を下げるために飲まれている
このように、病気の治療や予防の効果があると誤解させたり、医薬品的な効能効果を暗示させたりする表現は薬機法違反となります。
薬機法違反を防ぐための方法
D2C(ネット通販)ビジネスを始める前に、薬機法違反を防ぐための方法を勉強しておきましょう。まずは化粧品を販売する場合の、薬機法違反を防ぐ方法をご紹介します。
- <化粧品を販売する場合>
- 薬機法に書かれた化粧品の定義を守り、化粧品の製造・販売における許可を取得する
- 化粧品に認められている効能以上の宣伝をしない
化粧品を販売するためには「化粧品製造販売業許可」、製造するためには「化粧品製造業許可」が必要です。また、ECサイトやランディングページ、さらにネット広告などで商品を説明する際は、化粧品の効能として定義されている「人体に対する作用が緩和なもの」を超えた効果効能をPRしてはならないため、注意が必要です。
次に、健康食品を販売する場合の、薬機法違反を防ぐ方法をご紹介します。
- <健康食品を販売する場合>
- 医薬品の効果・効用と見なされる恐れがある表現をしない
健康食品には、医薬品のように病気を治したり予防したり、健康を増進したりする効果はありません。こうした効果を持つと誤解させる表現は、薬機法違反となります。商品ページや広告を作成する時には、NG表現でご紹介したような文言を注意深く避けて作成しましょう。
景品表示法とは?
次に、景品表示法についてご紹介します。景品表示法とは消費者が不利益を被ることがないようにするための法律で、正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」と言います。
景品表示法では、大きく分けて2つのことを禁止しています。
- 消費者の利益を妨げる「不当表示」
- 過大な景品の提供
<不当表示について(禁止されている内容)>
■「優良誤認表示」の禁止
- 実際の商品・サービスよりも優れていると表現
- 事実に反して、競合企業より良いと表現
例:実際には配合していない成分を偽って、配合されているかのように表示した
■「有利誤認表示」の禁止
- 価格や条件において、著しく有利であると誤認させる表示
- 競合他社よりも、著しく有利であると誤認させる表示
例:標準価格を記載せず「今なら半額」と表示したが、実際には標準価格であり、割引していない
<過大な景品提供について>
過大景品を提供することで、お客様がその景品に惑わされて商品を購入してしまう可能性があります。しかし、お客様から見て商品そのものの質が高いと感じられなかったり、「割高」だと思うことにより、トラブルに発展してしまうケースも考えられなくはありません。そのため、過大な景品提供は禁止されています。
そもそも景品とは、簡単に言うと「お客様に販売する商品に付随して提供する品物のこと」を指します。景品には「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」の3種類があり、それぞれに最高額や総額の制限が設定されています。規制を無視した景品を付けることは、景品表示法違反となります。
景品表示法のよくあるトラブル
最近では、D2C(ネット通販)ビジネスなどの「定期購入(サブスク)」についても、トラブルや相談が急増しています。
(引用:消費者庁「消費者白書」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/pdf/2018_whitepaper_all.pdf )
化粧品や健康食品などを定期的に購入してもらうD2C(ネット通販)ビジネスでは、次のようなトラブルが起こりやすくなっています。
- 商品をお試しで購入するつもりが、定期コース(サブスク)購入となってしまった
- 実質無料(送料のみ)と書いてあったが、4カ月以上の継続が条件で、無料は1回目だけだった
- 定期購入(サブスク)期間中には途中解約ができなかった
低価格で購入するための販売条件が他の情報より小さく書かれていたり、別のページに表示されていたりしても、トラブルの原因となります。消費者が認識しづらい表示は、「顧客の意に反して売買契約の申込みをさせようとする行為」とみなされる可能性があるため、わかりやすく表示することを心がけましょう。
景品表示法によるトラブルを防ぐための方法
景品表示法によるトラブルを防ぐためには、「不当表示」と「過大な景品提供」を避けて商品販売ページや広告・ランディングページを作る必要があります。このとき、まずは不当な表示(優良誤認表示・有利誤認表示)をしないということを心掛けましょう。
事実とは違うことを表記し、より良い商品であることを表現してはなりません。紛らわしい表現もNGです。
<優良誤認表示>
他社との比較表を“意図的”に操作し、事実に反して「最安値」と表示する
実際は添加物が含まれているにもかかわらず、「無添加」と表示する
<有利誤認表示>
合計価格は同じであるにもかかわらず、セット商品を「お徳用品」として販売する
架空の製品と比較して「最安値」と表示する
販売実績のない通常販売価格を掲載して、特価を表示する
また、過大な景品提供を防ぐためには、景品表示法で定められた景品の最高額を超えないように注意しましょう。
D2C(ネット通販)の成功のカギは「法律を正しく理解・守ること」
D2C(ネット通販)を成功させるためには、ここまでご紹介した薬機法と景品表示法という2つの法律を正しく理解し、厳守することが重要です。
これらの法律をしっかり守って取り組むことができれば、D2C(ネット通販)ビジネスが続けられなくなるという危険性はありません。それどころか、多くのお客様から信頼され、高い収益を得られるようになることで、可能性も広がるでしょう。
また、薬機法や景品表示法で禁止されている主な記載や、お客様が不信感を抱いてしまう、もしくはお客様とのトラブルに発展してしまいがちなNG例はあっても、言葉の使い方一つひとつに対して「OK・NG」を見極めることは、意外と難しいものです。
D2C(ネット通販)ビジネスを初めて行う方で、薬機法や景品表示法に関して100%の知識を持っているという自信がない方は、D2C(ネット通販)ビジネスに特化したコンサルティング会社に相談することもおすすめです。
まとめ
「D2C(ネット通販)ビジネスは危険・成功しない」と言われることがある理由は、薬機法や景品表示法といった法律があるためです。このような法律に関する知識を持たないままD2C(ネット通販)ビジネスを始めてしまうと、気付かぬうちに違法行為をしてしまう可能性があります。
しかし法律を正しく理解し、正しく運営することで、気付かぬうちに違法行為をしてしまうことを避けられるだけでなく、よりお客様から信頼を得られる通販サイトとなるかもしれません。
価格競争が起こりがちな総合通販に比べ、たとえ経営母体が小さくても、リピート顧客を獲得することで継続的に収益を得られるD2C(ネット通販)。成功させるためには、法律に違反してしまうNG例や、トラブルになりがちな事例を踏まえたうえで、安全かつ安定的に運営を続けましょう。