目次
消費者行動とは
消費者行動とは、消費者が商品購入する意思決定のプロセスや行動などを指します。
消費者行動を理解することで、より消費者に対し効果的な訴求が行いやすくなり、キャンペーンの成果も高まるとされています。
こうした消費者行動を理解するには、これから説明する分析方法を活用していきます。
SMART目標
SMART目標とは、目標設定の作り方を表したものであり、以下5つの指標から構成されています。
・Specific:具体的に
・Measurable:計測可能
・Achievable:達成可能
・Relevant:関連性
・Time-bound:期限が明確
上記5つの要素は、目標を達成するために必要な5因子とされています。
ただやみくもに消費者行動を理解しようと思っても、人によってムラができるなど、組織内で共通認識を持つのは難しくなります。
その点SMART目標を活用することで、チーム内で消費者行動の共通理解がしやすく、効率的に行えるメリットがあります。
SWOT分析
SWOT(スウォット)分析は、自社を取り巻く外部環境と内部環境の両環境面において、プラス面とマイナス面をそれぞれ分析する方法を指します。
・外部環境・・・市場、トレンド、競合他社、法律、社会情勢など
・内部環境・・・自社のブランド力、商品価格など
よくマーケティングや戦略策定で活用される、有名なフレームワークです。SWOTの頭文字は以下の4つの項目から構成されています。
プラス面 | マイナス面 | |
内部環境 | Strength(強み) | Weakness(弱み) |
外部環境 | Opportunity(機会) | Threat(脅威) |
SWOT分析は上記4つの指標を組み合わせることで、自社の市場機会や事業課題を発見しやすい分析方法です。
消費者側から各項目を捉えることで、消費者行動の分析に活用できるでしょう。
PEST分析
PEST(ペスト)分析とは、自社を取り巻くマクロ環境の分析を行う、マーケティングフレームワークです。PEST分析は以下の4つの指標から構成されています。
・Politics(政治)
・Economy(経済)
・Society(社会)
・Technology(技術)
自社は常に上記4つの要因を中心とした、マクロ環境に大きく影響を受けます。
いくら商品を改善したところで、マクロ環境からニーズを捉えていなければ、消費者には受け入れられずに終わってしまいます。
そのためPEST分析はマクロ環境に着目することからも、他のフレームワークよりも早めに着手することが望ましいとされています。
消費者や自社を取り巻くマクロ環境に着目し、洞察を深めていきましょう。
5Forces
5Forces(ファイブ・フォース)とは、業界構造を把握するためのフレームワークのことです。
以下5つの競争要因を分析することで、業界の収益性、魅力度が把握できます。
・業界内の競合
・売り手の交渉力
・買い手の交渉力
・新規参入者
・代替品
5forcesにおける競合と代替品の違いは、顧客のニーズによって分類できます。
競合はビジネスモデルが似ている企業で、主に同業他社に当たります。
一方の代替品とは、顧客に同じバリューを与える商材のことを指します。
テイクアウトのコーヒーを例に挙げると、コーヒーチェーン以外にもコンビニでも販売がされています。
両者は異なる業界ですが、テイクアウトのコーヒーであれば、消費者に与えるバリューは同じであると考えられます。
5Forcesは業界構造を深く分析するフレームワークのため、消費者行動とは一見関係がなさそうに見えますが、その業界内における消費者を間接的に把握できるメリットがあります。
購買行動モデルとは消費者がサービスを利用するまでの流れのこと
「購買行動モデル」とは、消費者が商品やサービスを認識してから、購入・利用に至るまでのプロセスをモデルとして整理したもので、消費者の購買行動について分析するうえでのツールとして役に立ちます。たとえば、ペルソナ設定やカスタマージャーニーマップの作成において非常に有用です。また、一つひとつのマーケティング施策について検討する際に、購買行動モデルのプロセスを参考にしながら分析することも効果的です。消費者の購買行動を促進する施策として、どのフェーズの施策が弱いのか、機能していないのかを客観的に分析できるようになるからです。
6種類の購買行動モデル
購買行動モデルには複数の種類があり、どのモデルを使えば効果的な分析ができるのかは、取り扱うプロダクトや状況によって異なります。購買行動モデルを正しく活用するためには、自身のプロダクトやマーケティング施策に適したモデルを適用する必要があります。
「AIDMA」はマスメディア主導の購買行動モデル
AIDMA(アイドマ)とは、購買行動モデルの中では最も有名で、ネット出現以前に考案されたモデルです。マスメディアやチラシなどの広告を使って、消費者に購買行動を一方向的に働きかける過程を説明しています。
AIDMAのプロセス
- Attention(注意)…商品のことを知る
- Interest(関心)…商品に関心を持つ
- Desire(欲望)…商品をほしいと思う
- Memory(記憶)…店頭に赴いたときに商品について思い出す
- Action(購買)…店頭に赴いたときに商品を購入する
現在では、後述するようなより複雑な購買行動モデルが検討されますが、今まで世になかったような新しいタイプの商品をリリースする際には、いまだ有効な分析の枠組みであるといえるでしょう。
AIDMAを活用した成功事例
AIDMAを活用した成功事例として、国内大手化粧品メーカーA社の事例を紹介します。
A社は看板商品であるシャンプーを新たに開発し、日本人女性をターゲットにした広告戦略等で大人気を博しました。AIDMAの法則に落とし込むと、以下のような流れです。
・A:Attention(注意)
大規模な予算と投じ、国民的アイドルや女優をプロモーションに起用。
・I:Interest(関心)
日本人女性向けのキャッチコピーを全面に打ち出す。
・D:Desire(欲望)
ドラッグストアや街頭等でサンプルを配布する。
・M:Memory(記憶)
ドラッグストア等でPOPを貼り、陳列してもらう。
・A:Action(購買)
消費者が店頭で商品を購入する。
このようにAIDMAの法則を活用することで、マスメディアを活用し、消費者への認知を広げ、購買行動へと繋げたのがよくわかる成功事例だといえます。
「AISAS」「AISCEAS」はネット検索主導の購買行動モデル
AISAS(アイサス)とAISCEAS(アイシーズ)はどちらも、消費者がネットで検索することをふまえて改善された購買行動モデルです。
AISASのプロセス
- Attention(注意)…商品のことを知る
- Interest(関心)…商品に関心を持つ
- Search(検索)…商品について検索する
- Action(購買)…商品を購入する
- Share(情報共有)…商品の情報についてネット上で共有する
AISCEASのプロセス
- Attention(注意)…商品のことを知る
- Interest(関心)…商品に関心を持つ
- Search(検索)…商品について検索する
- Comparison(比較)…複数の商品の特徴や性能、販売価格を比較する
- Examination(検討)…どの商品を購入するか具体的に検討し、絞り込む
- Action(購買)…商品を購入する
- Share(情報共有)…商品の情報についてネット上で共有する
AISASは代替するものがない小説や映画などのコンテンツなど、比較検討というプロセスがそれほど必要ない商品について分析するうえで適したモデルです。一方で、コンピューターなどの高価格な商品や賃貸物件などの生活に関わる商品については、慎重に情報収集がされるため、AISCEASのモデルで分析する方が適しています。
AISASを活用した成功事例
AISASを活用した成功事例として、パーソナルジムの先駆けとなったサービスを提供するS社の事例を紹介します。
S社は特徴的なキャッチコピーを中心に、斬新な切り口でそれまでのパーソナルジムとは一線を画したプロモーションによって、大幅に知名度を向上させました。
S社の事例をAISASに落とし込むと、以下のような流れになります。
・A:Attention(注意)
競合他社との差別化を意識した、象徴的なキャッチコピーやテレビCMを作成。
・I:Interest(関心)
細かくターゲット設定を行い、ターゲットに刺さる訴求を加速。
・S:Search(検索)
分かりやすいHPのレイアウトや、SEO対策を十分に行う。
・A:Action(購買)
返金保証を設定し、購買へのハードルを下げた取り組みを行う。
・S:Share(情報共有)
サービス体験談の口コミを促し、より多くの消費者へ自然と情報が共有されやすい環境を作る。
AISASは「検索」や「情報共有」といったフェーズが存在しており、インターネットを活用した認知向上施策が重要視されているのが特徴です。
「VISAS」「SIPS」はソーシャルメディアマーケティング主導の購買行動モデル
近年急速に発達したソーシャルメディアによる消費者への影響を分析するには、VISAS(ヴィサス)とSIPS(シップス)という購買行動モデルが適しています。VISAやSIPSなどでは、購買がゴールではなく、あくまでも共感やソーシャルメディア上での拡散に重きが置かれています。
VISASのプロセス
- Viral(口コミ)…口コミによってサービスを知る
- Influence(影響)…口コミをした人物から影響を受ける
- Sympaty(共感)…口コミに共感する
- Action(行動)…商品を購入する
- Share(共有)…商品について口コミで共有する
SIPSのプロセス
- Sympathize(共感)…ソーシャルメディア上の情報によって、商品に共感する
- Identify(確認)…口コミや検索によって、共感した内容について確認する
- Participate(参加)…ソーシャルメディア上で「いいね」や購買行動をする
- Share&Spread(共有と拡散)…消費者が参加したことについて、ソーシャルメディア上で共有・拡散する
VISASは、口コミから共感することによって「潜在ニーズ」が発掘されるという特徴があります。また、SIPSは企業や商品に関するブランドイメージといった消費者の感情を主な分析対象としています。
「Dual AISAS」はネット検索モデルとソーシャルメディアマーケティングを統合したモデル
ネットの検索とソーシャルメディアマーケティングは、お互い密接に関わっているため、どちらも両輪の軸として施策に取り組む必要があります。Dual AISAS(デュアル・アイサス)とは、従来のネット検索型モデルであるAISASを「買うことが目的のAISAS」とし、ソーシャルメディア上の「広めることが目的のAISAS」を統合することで、どちらの視点も導入した画期的な購買行動モデルとして注目されています。
買うことが目的のAISAS(通常のAISAS)
- Attention(注意)…商品のことを知る
- Interest(関心)…商品に関心を持つ
- Search(検索)…商品について検索する
- Action(購買)…商品を購入する
- Share(情報共有)…商品の情報についてネット上で共有する
広めることが目的のAISAS
- Activate(起動)…商品に興味を持つ
- Interest(興味)…商品に対し意欲的に参加意識を持つ
- Share(共有)…商品の内容に共感し、ソーシャルメディア上で情報を共有
- Accept(受容)…第三者が情報や内容を受け取る
- Spread(拡散)…情報を受け取った第三者が拡散する
Dual AISASでは、消費者が商品を購入し情報を共有して終わりではなく、消費者が「商品を広めたい」という動機づけがされるという点で特色のある分析モデルです。特に、商品のブランドイメージなどについても検討したい場合には、非常に有効なモデルといえるでしょう。
D2C(ネット通販)における購買行動
D2C(ネット通販)における購買行動を踏まえる上で、以下2つのファネルを把握することが重要です。
そもそもファネルとは、集客から購買(コンバージョン)に至るまでに、顧客が踏む行動ステップのことを指します。
最初は潜在顧客が多いものの、購入に至るまでに顧客数は絞り込まれるため、逆三角錐の形をすることから、ファネルと呼ばれています。
関連記事:D2C(通販)におけるファネルとは【新規顧客を獲得してロイヤルカスタマー化】
新規顧客獲得のためのファネル
新規顧客獲得のためのファネルは、認知→興味・関心→検討の3段階から成っています。
このフェーズでは潜在顧客の顕在化が主な目的であり、見込客をどれだけ獲得できるかが重要なポイントです。
D2C(ネット通販)においては、いきなり商品購入を迫るのでなく、モニター商品への購買を促し、より多くの見込客を獲得していきましょう。
関連記事:D2C(ネット通販)における「ツーステップマーケティング」について
既存顧客管理のためのファネル
既存顧客獲得のためのファネルは、リピート→アップセル・クロスセル→ロイヤルカスタマー化の3段階から成っています。
このフェーズではモニター商品を購入した顧客に対し、いかにリピーター、将来的にはロイヤルカスタマーとなってもらえるかが重要なポイントです。
D2C(ネット通販)においては、定期コース(サブスク)や関連商品の訴求を行うことが有効です。
顧客の購入単価やLTVの向上を狙い、D2C(ネット通販)のビジネスを継続的に拡大させましょう。
購買行動に影響する4つの要因と例
消費者の購買行動について分析するためには、購買行動に影響を与える具体的な要因についても検討する必要があります。以下では、コトラーによる「購買行動の4つの要因」について説明します。
「文化的要因」とは消費者を取り巻く文化が購買行動に及ぼす影響と例
「文化的要因」とは、消費者が属している環境やコミュニティ、時代的な風潮などの文化が購買行動に与える影響のことです。言語や習慣などの要素が、文化的要因に相当します。たとえば、東南アジアでは「日本製品は高級で品質がよい」とされ、商品のパッケージに漢字が使われることがあります。また、サブカルチャーや社会階層も文化的要因の1つです。多様化が進む現代の日本においては、一般的に文化的要因は小さくなっているといえますが、一方でサブカルチャーまでを視野に入れて、消費者が受けている文化的要因を分析すると、購買行動への思わぬ影響を発見できるかもしれません。
「社会的要因」とは消費者を取り巻く社会集団が購買行動に及ぼす影響と例
「社会的要因」とは、消費者が属している組織や社会集団、そして消費者の社会的役割が購買行動に与える影響のことです。具体的には、家族や友人関係、職場環境の中における地位や役割、構成員とのやり取りが購買行動に与える影響が社会的要因に相当します。たとえば、女子高生は、学校で流行っているファッション小物を買いたいと思うかもしれません。また、家庭を持っている男性の場合、ゴルフのグッズやプラモデルのコレクションを買おうとしても、妻から反対される可能性があります。このように、社会的要因が購買行動にどのような影響を与えているかを分析することで、阻害要因や促進要因をより明確にできます。
「個人的要因」とは消費者のライフステージや価値観が購買行動に及ぼす影響と例
「個人的要因」とは、消費者の年齢や性別といった属性、ライフステージや置かれている個人的な環境、そして個人的な価値観や生活リズムなどが購買行動に及ぼす影響のことです。個人的要因は、価値観の多様化が進む近年において、最も変化が激しい要因です。実際の消費者の個人的要因を細かく明らかにすることで、プロダクトやサービスと消費者とのより深い結びつきを明らかにできます。潜在顧客を見つけるためのヒントにもなるかもしれません。
「心理的要因」とは消費者のモチベーションや認知が購買行動に及ぼす影響と例
「心理的要因」とは、消費者のモチベーションや好奇心、成長意欲、過去の経験や認知などが購買行動に及ぼす影響のことです。たとえば、スタイリッシュなデザインは消費者の購買意欲を刺激しますし、過去にその商品を購入することで満足した経験があれば、購買意欲は常に高い水準のまま保たれます。
また、どのような体験が消費者の満足度を高めるのかという、モチベーションの源泉や消費者にとって望ましい成長体験にも着目します。どのような心理的要因によって消費者が商品を購入しているのかを明らかにし、同時に商品を購入し利用することが、消費者にどのような心理的な影響を与えているのかについて明らかにすることで、消費者のロイヤリティを高めるためのヒントが見つかるかもしれません。
購買行動に繋げる心理的ポイント
購買行動に影響する4要因は、消費者の行動を分析する際には便利ですが、購買行動に繋げるための具体的な方法については示していません。以下では人間の購買行動を促進する心理的ポイントについて、社会心理学の観点から説明します。購買行動を促進する具体的な要因については、社会心理学者ロバート・チャルディーニ著の『影響力の武器』で詳しく知ることができます。
試供品を提供すれば「返報性の原理」によって購買行動を促進できる
試供品や無料サービスを提供することは、消費者の購買行動を促進する効果があります。人は他者から親切や贈り物などを受け取ると、 恩恵を与えてくれた人に対してお返しをせずにはいられない気持ちになるからです。これを「返報性の原理」といいます。試供品の提供だけではなく、ノベルティのプレゼントなども同様の効果があります。また、物だけではなく、「親切にしてもらった」という対人要素も返報性の原理が働くので、接客にも十分気をつかう必要があるでしょう。
数量を限定すれば「希少性」によって購買行動を促進できる
人間は、商品の数量が限定されると、「希少性」によって行動が促進されます。希少性とは、「手に入りにくくなるとその機会がより貴重なものに思えてくる」 というバイアスのことです。実際の販売についていうのであれば、「数量限定」や「期間限定」というように一定数の制限を設けることで希少性を高められます。
特に、「商品の割引」や「無料お試しセット」などは、入手が容易になることで「簡単に手に入るものと」認識されてしまうため、価値を認識されづらくなるというデメリットがあります。そこで、機会を「限定」することで、希少性を高めれば、商品価値を損なうことなく消費者に提供できます。
関連記事:購買心理を理解して売上アップ【購入したくなるプロセスを学ぶ】
まとめ:消費者行動の例からD2C(ネット通販)ビジネスを成功させよう
購買行動モデルと購買行動の4つの要因は、それぞれ消費者が商品を購入するプロセスについて分析するために有用な枠組みです。自社の商品やサービスに適した購買行動モデルを用いることにより、一つひとつのマーケティング施策について分析することが可能となります。また、購買行動の4つの要因について分析することは、ターゲットの属性や購買動機について深く理解するための大きな手掛かりとなるはずです。
消費者の購買行動について分析した後は、実際の購買促進の要となる心理学的なポイントについて理解したうえで、施策を検討する必要があります。「返報性」「希少性」といった人間の普遍的な心理を利用することで、消費者の購買行動を促進するよう心がけましょう。