目次
D2C(ネット通販)における「クロスセル」とは?
まずは、D2C(ネット通販)におけるクロスセルの意味について説明します。クロスセルとは、商品を購入したお客様に、別の商品も併せておすすめする販売手法を指します。
たとえば、ファストフード店でハンバーガーを購入した際、「ご一緒にポテトはいかがですか」とおすすめされた経験はないでしょうか。これは、飲食店におけるクロスセルの有名な事例です。
クロスセルの導入は、追加費用をほとんど必要としないにもかかわらず、客単価が上がり売上がアップします。ハンバーガー店の例で言えば、店員のセリフマニュアルをたった一つ増やすだけです。
D2C(ネット通販)は、優良顧客となる商品のファンを作ることで利益を作ります。定期購入(サブスク)してくれている優良顧客は、既に販売会社を信頼しているため、新たな商品をおすすめしやすいでしょう。
「アップセル」との違い
クロスセルと似たような販売手法として「アップセル」が挙げられます。アップセルとは、ある商品を購入しようとするお客様に対して、同種類の上位版の商品をおすすめする販売手法を指します。
ファストフード店でたとえると、クロスセルは、「ハンバーガーを頼むお客様にポテトとのセットをおすすめする」という手法でした。一方でアップセルは、「プラス100円でポテトとコーラを増量できます」といった手法になります。これは、飲食店におけるアップセルの有名な事例です。
クロスセルと同様に、アップセルも導入における費用はほとんど必要としません。新たな顧客対応を増やさずに客単価を上げて、売上をアップさせるという狙いがあります。
そして、クロスセルとアップセルの目的は、LTVの最大化にあります。LTVとは「Life Time Value」の略で、「顧客生涯価値」を意味します。D2C(ネット通販)事業におけるLTVを分析することで、リピート率のアップやネット広告の効果の向上を望めます。
D2C(ネット通販)は、商品を何度も購入してもらうことで利益を出すビジネスモデルです。既存顧客との関係性を重視する上で、LTVを向上させる意識が大切となります。
お客様が生涯を通じて企業にもたらす利益は、一人ひとり異なります。それぞれのお客様に対して販売する商品を変えることで、企業とお客様の両方にメリットをもたらすでしょう。
D2C(ネット通販)でクロスセルが重要な理由
D2C(ネット通販)において、クロスセルが重要な理由は主に以下の3点です。
客単価を上げることができる
1つ目は、客単価を上げることができるという点です。
売上高と客単価は密接に関係しており、両者は以下の計算式で算出します。
- 売上高=客単価×購入客数
- 客単価=売上高÷購入客数
上記からもわかるように、客単価は売上を伸ばす上で重要な要素だといえます。
適正な客単価は扱っている商品によってまちまちです。客単価のデータを定期的に集め、分析・改善を行っていくことが大切です。
LTVを最大化することができる
2つ目は、クロスセルによってLTVが最大化できるという点です。
LTVとは「Life Time Value」の略で、「顧客生涯価値」を意味します。平たく言うと「一人の顧客が生涯にどれだけ企業に利益をもたらしたか」を表す指標です。
D2C(ネット通販)事業におけるLTVを分析することで、リピート率やネット広告効果の向上が期待できます。
そもそもD2C(ネット通販)は、商品を何度も購入してもらうことで利益を出すビジネスモデルです。
初回購入はあくまできっかけであり、その後の継続購入によって利益を出すD2C(ネット通販)において、LTVの最大化はビジネスの最大化にも繋がります。
そのため既存顧客との関係性を重視する上で、LTVを向上させる意識が大切です。
顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益は、一人ひとり異なります。また一度離反した顧客であっても、何かのタイミングで再び購買が復活することもあります。
このように顧客の状況を把握し、それぞれの顧客に適した商品を提案することで、企業と顧客の両方にメリットがもたらされ、結果的にLTVの最大化が期待できるでしょう。
関連記事:LTV(ライフタイムバリュー)とは?【顧客価値を分析して利益を最大化】
解約防止に繋がる
3つ目にクロスセルが重要な理由として、解約防止に繋がるという点が挙げられます。
例えば化粧水を購入した顧客に向けて、乳液をクロスセルしたとしましょう。
スキンケアに化粧水と乳液は欠かせないため、一回気に入ってもらえれば、今後も継続して化粧水と乳液の両方を使う人が多いでしょう。
仮にどちらかを解約したいと思っても、いずれにせよスキンケアで必要なものなので、新たに商品を探さないといけません。
違う商品を試してもそれが自分の肌に合うかは分からないため、探すのを面倒に感じ、「シリーズで使った方が肌にも良いだろう」と、解約する人は非常に少ないのです。
このように今使っている商品と合わせて使えるものをクロスセルでおすすめすると、もう一方を解約するデメリットが多いことからも、継続して購入する顧客が多く、解約防止に繋がります。
また定期購入(サブスク)コースへのクロスセルを行い、3ヶ月ごとに決済するシステムに設定するのもおすすめです。
3ヶ月おまとめコースに変更することで、1年間の支払い回数が12回から4回に減ります。
そうするとお金を支払う回数が減るので、解約を考えるタイミングが自動的に減り、解約防止はもちろん、LTV向上も期待できます。
クロスセルを成功させるために有効な施策
クロスセルは、売上をアップさせるために有効な施策と言えます。しかし、ただ他の商品をおすすめするだけの販売手法ではありません。特に、D2C(ネット通販)において間違った勧め方をしてしまうと、ブランドや商品の信頼度について悪影響を及ぼす可能性もあります。
D2C(ネット通販)でクロスセルを導入するにあたり、気を付けておきたいポイントが4点あります。
- フォローメールを送信する
- 同梱物を利用する
- レコメンド機能の活用
- それぞれのニーズに適した関連商品のアプローチ
ここからは、上記4つのポイントをおさえながら、クロスセルの導入方法を詳しく解説します。
フォローメールを送信する
クロスセルを成功させるために、フォローメールを送るのも有効な方法です。フォローメールを送る上では、以下4点のポイントがあります。
・顧客のステージに合わせる
・ワンクリックで申込可能な設計にする
・SMSやLINEも効果的
・配信タイミングは初回申込時間に合わせる
顧客のステージに合わせる
フォローメールは、顧客のステージに合わせて専用のフォローメールを送りましょう。
引上専用フォローメール®やリピート専用フォローメール®、クロスセル専用フォローメール®といったように、それぞれの段階で適切なフォローメールがあります。
これらを適切なタイミングで送ることで、クロスセルの可能性を高められます。
ワンクリックで申込可能な設計にする
また効果的なフォローメールに共通しているのは、フォローメールからワンクリックで申込ができるように設定されていることです。
多くのD2C(ネット通販)会社では、2回目以降の申込を、会員専用のID/PW方式にしている会社が多いです。しかし会員専用のID/PWは、忘れる人も多くエラーばかり起きるので、申込する気力が失せてしまいます。
しかしフォローメールからワンクリックするだけで申込を可能にすると、手間が大幅に省けるので、引上率・クロスセル率を上げられます。
SMSやLINEも効果的
フォローメールはSMSやLINEで送るのも効果的です。できるだけ顧客が普段利用する連絡手段を用いるのが良いでしょう。
配信タイミングは初回申込時間に合わせる
またフォローメールの配信タイミングは、初回申込時間に合わせるのもポイントです。
多くの顧客はライフスタイルに合わせて、毎日同じ時間帯にスマホにアクセスします。
そのため”初回申込”をした時間と同じタイミング”でフォローメールを送ると、引上率やクロスセル率が飛躍的に高まります。
関連記事:フォローメールの効果的なタイミングとは?【適切に配信して引上率・クロスセル率アップ】
同梱物を利用する
クロスセルを成功させるために、同梱物も上手に利用していきましょう。
購入商品とセットで使うと効果的な商品など、おすすめの商品をモニターとして同梱するのも、クロスセルを高めるのに効果的です。
また購入完了画面やサンクスメール、同梱物で効果を実感してもらうために「6ヶ月継続の重要性」を訴求しましょう。
このように「6ヶ月継続」と具体的な日数を明記することで、顧客のLTVを高められるのと同時にクロスセルも成功させやすいのです。
レコメンド機能の活用
クロスセルの代表的な手法としてレコメンド機能が挙げられます。レコメンド機能は、購入した商品と関連が深い商品をお客様におすすめする機能です。たとえば、ショッピングサイトで商品を購入した際に「こちらの商品もおすすめです」と購入を促す機能がよく見られます。
D2C(ネット通販)では基本的に1つの商品を販売するため、セット買いしてもらう商品の種類が絞られます。メインで販売する商品と関連性が深く、複数の商品を併用して利用することで効果が上がる商品が理想的と言えるでしょう。特に、メイン商品との関連性のある商品が多い化粧品ジャンルでは、より効果的です。
とは言え、D2C(ネット通販)は基本的に商品数が少ないため、たくさんのおすすめ商品を紹介するレコメンド機能ではなく、各ユーザーに応じて少数の商品を限定しておすすめするレコメンド機能の導入がおすすめです。
それぞれのニーズに適した関連商品のアプローチ
クロスセルでセット販売する商品は、1つとは限りません。お客様それぞれのニーズに適した関連商品を用意することで、複数のアプローチ方法を構築できます。
たとえば、サプリメントの販売においては、筋力アップを求めるお客様にはプロテイン、体調を整えたいお客様にはビタミンなど、各顧客のニーズに適した関連商品をおすすめしましょう。
お客様のニーズを調べる方法としては、アンケート機能が挙げられます。定期購入(サブスク)している既存のお客様に対して、悩みについて質問するアンケートを実施しましょう。
お客様の悩みに応じておすすめする商品を変えることで、併せて商品を購入してもらう確率を上げられます。お客様にとっても、自身の悩みに対応した商品を紹介してもらえるというメリットがあります。
クロスセルの最適なタイミング
D2C(ネット通販)においてはクロスセルを活用するタイミングをよく考える必要があります。
新規顧客にクロスセルを導入すると、商品購入を止めるきっかけを作ってしまう可能性もあります。
ここからはクロスセルに最適なタイミングをご紹介します。
複数回商品を購入した後
D2C(ネット通販)においてクロスセルに最適なタイミングは、「複数回商品を購入した後」です。
一般的な商品の場合、クロスセルは商品の販売時に行われます。しかし、D2C(ネット通販)のクロスセルで最適なタイミングは、顧客が複数回、商品を購入した後が有効です。
D2C(ネット通販)は定期購入(サブスク)コースで利益を上げるビジネスモデルであるため、いかに多くの顧客に定期購入(サブスク)コースに申込してもらうかが重要です。
ただしD2C(ネット通販)でクロスセルへのスムーズな申込を促すには、顧客との信頼関係の構築が特に重要です。
具体的には顧客が複数回商品を購入した後、クロスセルの案内をフォローメールで行いましょう。
商品利用のサイクルに合わせる
クロスセルの最適なタイミングを考える上で、顧客の商品利用サイクルに合わせるのも重要な視点です。
顧客一人ひとりに合った消費サイクルに合わせて、フォローメールの配信を変えるなどクロスセルのタイミングを工夫すると、引上率やクロスセル率が上がります。
中には引上率・ クロスセル率が最大で2.7倍も上昇したという事例もありますので、ぜひ導入してみてください。
商品別で分かりやすい! クロスセルの成功事例
D2C(ネット通販)は総合通販と比較して、クロスセルの導入が難しいと言われています。しかし、D2C(ネット通販)を提供する販売会社の中には、クロスセルで成功している企業も実際に存在します。
D2C(ネット通販)におけるクロスセルでは、販売する商品によってアプローチ方法を変える必要があります。ここからは、クロスセルの成功事例をもとに、有効な戦略について解説します。
化粧品のクロスセル
スキンケア商品であれば、クレンジング、洗顔料、乳液、化粧水、クリーム等を一連の流れで使用するという女性は多いでしょう。このように化粧品ジャンルでは、クロスセルとしてお客様の関連購入を望める商品が数多く存在します。そして実際に、1つの商品を気に入ったお客様に期間限定の割引を提示して、関連商品のクロスセルに成功しているD2C(ネット通販)会社は多いです。
化粧品のクロスセルを成功させるためには、まず訪れたユーザーに購入しやすいモニター商品を用意して、初回購入による転換率の向上を促しましょう。そして、同梱物にお礼状や体験談を入れて、お客様と信頼関係を築くことが大切です。ファンとなってくれた定期(サブスク)顧客に関連商品をおすすめすることで、利益の最大化に近づくことができるでしょう。
健康食品のクロスセル
かつて、健康食品ジャンルにおいては、1つの商品だけを販売して大きく売上を伸ばすマーケティングが多く見られました。しかし、現在は複数のタイプの健康食品を用意して成功するD2C(ネット通販)会社が多く見られます。
複数のタイプの商品を用意することにより、ある商品を気に入ったお客様に他の商品をおすすめするクロスセルのマーケティングを導入することができます。さらに複数のラインナップから一つの商品をおすすめすることで、各顧客に適した商品を紹介できるでしょう。
たとえばサプリメントの販売であれば、質問式のフローチャートを送付することで、各顧客に必要な栄養素を提案できます。商品企画の段階からクロスセル戦略を織り込み、有効なマーケティング施策を構築しましょう。
クロスセルを行う上での注意点
クロスセルは訴求を強めれば必ずしも成果が出るとは限りません。むしろ強引にクロスセルを迫ると、解約の原因に繋がることもありますので注意しましょう。
クロスセルを成功させるには、適度な回数や顧客に合ったタイミングを意識し、顧客ファーストで考えていくのが大切です。
「この商品と合わせて使うと効果が倍増する」など、顧客にとってのメリットを伝えられると、より高いクロスセル率に繋がるでしょう。
クロスセル導入のタイミングはCRMを意識することが大切です。CRMは「Customer Relationship Management」の略で、「顧客関係管理」を意味します。
CRMを導入して、顧客データを管理、分析する取り組みを行いましょう。
D2C(ネット通販)のクロスセルでは、関連商品のコンバージョン率を見るだけでなく、顧客満足度の向上を意識することも大切です。
お客様によって、利益を最大化できるクロスセルのタイミングは異なります。
定期購入(サブスク)の回数だけでなく、前回購入時からの経過日数や、アンケートによるユーザーニーズに応じてクロスセルを行うタイミングを変えましょう。
まとめ:クロスセルを成功させて売上アップを目指そう
かつてD2C(ネット通販)と相性が悪いと思われていたクロスセルですが、今やD2C(ネット通販)に欠かせない戦略と言われるようにもなりました。D2C(ネット通販)による事業の運営を考える場合には、あらかじめクロスセル戦略を織り込んだマーケティングを考えましょう。
そしてD2C(ネット通販)では、当面の売上だけでなくお客様との関係性を維持する意識が大切です。クロスセル戦略を導入する際は、売上のアップだけに目を向けず、お客様にとってもプラスになる提案を心がけましょう。ここまでの内容を参考に、ぜひD2C(ネット通販)におけるクロスセルを実践してみてください。
※「引上専用フォローメール」は特許庁商標登録済み商標です。※登録商標第5937599号
※「リピート専用フォローメール」は特許庁商標登録済み商標です。※登録商標第5937600号
※「クロスセル専用フォローメール」は特許庁商標登録済み商標です。※登録商標第5938214号